◆借入金金利だけが金利ではない。
前回、買掛金を利用するということは『仕入先が借入金の金利相当額を当社に代わって支払ってくれているということ』と言いましたが、この点をもっと詰めてみたいと思います。
まず、ちょっと”金利相当額の重要性を認識を認識していますか?”ということを考えてもらいたいです。
一般的な認識としては、金利と言っても年間数%くらいなので、たいしたこと無いと考えているかもしれません。また、金利について日々頭を悩ませている会社経営者でも、借入金の利息の支払については金利を考えても、それ以外の金利についてはあまり認識していないのではないでしょうか。
しかし、金利を考える場合は単に借入金の金利だけでは全くもって不十分です。というのは同時に資本の金利も考える必要がある。からなのです。この資本の金利を資本コストといいます。
なんか、前回から資本コストとか言う言葉が結構出てくるけど、そもそも資本コストってなんですか?という人もいると思うので、まずはとりあえず、資本コストについて簡単に説明します。
◆資本コストって?
ものすごく簡潔に資本コストを説明すると、以下のような感じです。
会社は資本であっても、借入であっても資金を調達した以上、それを運用して成果を出す責務があります。というのはネットの調達金利がマイナスだとそもそも会社として存続できないからです。
※この点については、前回の『資金繰りをどうする?(7)』参照
ここで、借入金については約定した金利があるので、それが払えないと会社が潰れてしまう=それを上回る成果を出さないとならないことは自然に(強制的でもある)認識されていると思います。この場合の約定金利を出さなければならない成果の基準と言うことで、ハードルレートといいます。
同様に資本についてもクリアしなければならないハードルレートがあります。それは何かというと、資本の出し手、つまり株主が期待している金利です。資金の出し手は、その形態(借入金か資本か)に関係なく、当然、あるリターンを期待してお金を出しています。従って、会社は借入金の出し手の期待(約定金利)だけでなく、株主の期待にも当然応える義務があります。
※借入金の出し手の期待は契約で決定(約定金利)されており、多くの経営者はこれを義務と感じています。これに対して、株主の期待は契約が存在していないので、これを義務と考えていない経営者もいると思います。
しかし、株主の期待は直接的には配当を受ける権利、間接的には議決権、少数株主権等の行使によって実行される余地のあるものです。昨今、利益を上げられない会社の経営者が解任されたり、会社自体が売却されたりしていますが、これも株主が自らの期待を実現化する手段として行ったものと考えると、経営者には株主の期待に応える義務が当然存在することが分かると思います。
ではいったい株主の期待している金利とはどれくらいなのでしょうか?
これは一概に何%と決められませんが、まずは借入金の金利よりは高いと思ってもらって問題ないです。これ以上詳細に説明しようとするとファイナンスの話になってしまって長くなってしまうので、簡略化しますが、株主からの資金(資本)に対しても株主の期待する金利を支払うことによって報いる必要があることはしっかりと認識しておいてください。そして、この株主の期待する金利を資本コストと言います。
※株主に対する金利は配当金および株式の値上がりによるキャピタルゲインの実現といった形で支払われます。逆に言うと株主は投資した段階で、これらを見込んでいるのですから、株主の見込んだ配当金の支払(配当率)、株式の値上がり(値上がり率)がハードルレートとなります。
◆見えない金利が存在する
以上までは、通常認識できる金利です。しかし、金利として考えなければならないのはこれだけではありません。さらに見えない金利が存在してます。それ一体何かというと貸借対照表に計上されているもので使用価値を生み出さない資産から生じる金利です。
この金利の影響によっても企業価値が流出しています。
ちょっと複雑なので簡単に説明します。
ここに使用価値を生み出さないある資産が存在しているとします。もし、その使用価値を生み出さない資産に充てている金額を使用価値を生み出す資産に振り向けていたのならば、何がしかの利益(使用価値)が得られるであろうと考えることができますよね。ならば逆から考えると、そうしなかったことによって得られなかった利益分は損失が発生していると考えることもできます。
※損失と言っていますが、+を得られることを放棄したと言う意味で、マイナスの発生ではないです。
この得ることを放棄した利益(使用価値)を機会損失金利(勝手に作った言葉で一般用語ではないです)と勝手に呼びます。
まだまだよく分からんと思うので、具体例を示します。
例えば、売掛金を100もっている場合を考えてみましょう。
もし、売掛金を急いで回収して、回収した現金100を金利が1発生する預金に振り向けていたならば、預金金利分として+1の企業価値を増加させることができたはずです。
※この+1を得ることができたはずの利益(使用価値)と考えています。
しかし、回収しないで売掛金として持っているならば、利益は発生しません。
つまり、売掛金を持っていることを選択したことによって、回収を選択した場合と比較して+1の差額が発生します。これが機会損失金利です。
◆これだけ企業価値が流出している!
では、以上を総括して具体的に金利として会社が失っている企業価値を見てみましょう。
損益計算書を見てください。そこに支払利息と記載してある金額が借入金に対する金利として会社が失った企業価値です。また、株主資本変動計算書を見てください。そこに配当金として記載されている金額が資本に対する金利として会社が失った企業価値の一部です。
また、貸借対照表を見てください。そこに売掛金、在庫として記載されている金額も使用価値を生みださない資産として、記載金額×金利率の金額が、機会損失金利として会社が失った企業価値です。
※ここでいう金利率とは使用価値の利率ですから、何で使用価値を得るか(例えば預金、有価証券、土地等)によって変化します。通常は、安定金利(短期なら預金金利、長期なら長期国債の金利等)で考えていればいいでしょう。
さらに正確に言うと手許現金も金利がつかないので、機会損失金利が発生しています。さらに在庫については期間の経過とともに、品質劣化・時代遅れ品等で価値が下がることがありますので、保有しているだけで機会損失金利+品質劣化等の価値下落の合計分だけの企業価値を流出させている可能性があります。
※なお、在庫して不動産を保有(つまり販売用不動産)している場合は、逆に保有していても機会損失金利が発生しないこともあります。というのは、不動産は他の在庫資産と異なり、使用価値に着目した価値が自然に発生する場合があるからです。理由の説明は難しくなるので簡単にしか説明しませんが、不動産は多変性のある使用価値をもっているため、仮に在庫として計上してあっても、その使用価値のひとつに着目した実需が別のところで生じる可能性があるためです。
例えば在庫としてイスと土地を持っていた場合を考えてみます。イスは”座る”という用途の価値しかもっていない(美術品的価値を持つイスは考えない)ので、仮に売却を考えた場合、誰に売っても同じ価値です。が、土地についてはビルを建てる、駐車場に利用する等の様々な用途で利用できるので、買主が使用目的を持っていれば価値が生じます。従って、売主が想定していない隠れ用途で使用価値が発生していて、より高い金額で売却できる可能性、つまり現状100の価値で計上されている土地が、場合によっては200の価値で売れるケースもあるのです。
難しいですね。まあ、時と場合によっては、持っているだけでいきなり価値が上がることもあるからという理解でよいと思います。
そしてここまで説明すると多分気づかれたと思いますが、
プラスの使用価値を生み出さない=期間損失金利の発生
ならば、固定資産に計上されていても遊休状態(つまり使用価値が発生していない状態)になっている土地や長期間塩漬けになっている有価証券も企業価値を流出させているのでは?と思ったかもしれません。その通り、企業価値を流出させてます。
※これらの遊休資産等の企業価値の流出を財務諸表に反映させてしまうのがいわゆる『減損会計』や『金融商品会計』です。いずれ解説予定。
かなり長くなってしまったのですが、結局何が言いたかったのかというと、金利を念頭においてその対応策を考える会社、何も考えない会社とでは、金利対策以外は同じ事をしていても、上記分だけの企業価値の差が発生する可能性があるということです。
金利の認識を持つことはとても重要なことだということですね。
なお、話が長くなってしまったので、これらの企業価値の流出をではどうやって最小化するか?については次回にします。
今回も買掛金の話から大幅に逸れてしまいましたね。スイマセン。
(次回に続く)

