2006年11月05日

資金管理をどうする?(8):続々お金を回す仕組みを考える(6)

 前回は話が逸れてしまいましたが、また買掛金について考えてみます。

◆借入金金利だけが金利ではない。

 前回、買掛金を利用するということは『仕入先が借入金の金利相当額を当社に代わって支払ってくれているということ』と言いましたが、この点をもっと詰めてみたいと思います。
 まず、ちょっと”金利相当額の重要性を認識を認識していますか?”ということを考えてもらいたいです。
 一般的な認識としては、金利と言っても年間数%くらいなので、たいしたこと無いと考えているかもしれません。また、金利について日々頭を悩ませている会社経営者でも、借入金の利息の支払については金利を考えても、それ以外の金利についてはあまり認識していないのではないでしょうか。 
 しかし、金利を考える場合は単に借入金の金利だけでは全くもって不十分です。というのは同時に資本の金利も考える必要がある。からなのです。この資本の金利を資本コストといいます。

 なんか、前回から資本コストとか言う言葉が結構出てくるけど、そもそも資本コストってなんですか?という人もいると思うので、まずはとりあえず、資本コストについて簡単に説明します。

◆資本コストって?

 ものすごく簡潔に資本コストを説明すると、以下のような感じです。
 会社は資本であっても、借入であっても資金を調達した以上、それを運用して成果を出す責務があります。というのはネットの調達金利がマイナスだとそもそも会社として存続できないからです。
 ※この点については、前回の『資金繰りをどうする?(7)』参照

 ここで、借入金については約定した金利があるので、それが払えないと会社が潰れてしまう=それを上回る成果を出さないとならないことは自然に(強制的でもある)認識されていると思います。この場合の約定金利を出さなければならない成果の基準と言うことで、ハードルレートといいます。

 同様に資本についてもクリアしなければならないハードルレートがあります。それは何かというと、資本の出し手、つまり株主が期待している金利です。資金の出し手は、その形態(借入金か資本か)に関係なく、当然、あるリターンを期待してお金を出しています。従って、会社は借入金の出し手の期待(約定金利)だけでなく、株主の期待にも当然応える義務があります。
 ※借入金の出し手の期待は契約で決定(約定金利)されており、多くの経営者はこれを義務と感じています。これに対して、株主の期待は契約が存在していないので、これを義務と考えていない経営者もいると思います。
 しかし、株主の期待は直接的には配当を受ける権利、間接的には議決権、少数株主権等の行使によって実行される余地のあるものです。昨今、利益を上げられない会社の経営者が解任されたり、会社自体が売却されたりしていますが、これも株主が自らの期待を実現化する手段として行ったものと考えると、経営者には株主の期待に応える義務が当然存在することが分かると思います。


 ではいったい株主の期待している金利とはどれくらいなのでしょうか?
 これは一概に何%と決められませんが、まずは借入金の金利よりは高いと思ってもらって問題ないです。これ以上詳細に説明しようとするとファイナンスの話になってしまって長くなってしまうので、簡略化しますが、株主からの資金(資本)に対しても株主の期待する金利を支払うことによって報いる必要があることはしっかりと認識しておいてください。そして、この株主の期待する金利を資本コストと言います。
 ※株主に対する金利は配当金および株式の値上がりによるキャピタルゲインの実現といった形で支払われます。逆に言うと株主は投資した段階で、これらを見込んでいるのですから、株主の見込んだ配当金の支払(配当率)、株式の値上がり(値上がり率)がハードルレートとなります。

◆見えない金利が存在する
 
 以上までは、通常認識できる金利です。しかし、金利として考えなければならないのはこれだけではありません。さらに見えない金利が存在してます。それ一体何かというと貸借対照表に計上されているもので使用価値を生み出さない資産から生じる金利です。
 この金利の影響によっても企業価値が流出しています。
 
 ちょっと複雑なので簡単に説明します。
 ここに使用価値を生み出さないある資産が存在しているとします。もし、その使用価値を生み出さない資産に充てている金額を使用価値を生み出す資産に振り向けていたのならば、何がしかの利益(使用価値)が得られるであろうと考えることができますよね。ならば逆から考えると、そうしなかったことによって得られなかった利益分は損失が発生していると考えることもできます。
 ※損失と言っていますが、+を得られることを放棄したと言う意味で、マイナスの発生ではないです。

この得ることを放棄した利益(使用価値)を機会損失金利(勝手に作った言葉で一般用語ではないです)と勝手に呼びます。
 
 まだまだよく分からんと思うので、具体例を示します。
 例えば、売掛金を100もっている場合を考えてみましょう。
 もし、売掛金を急いで回収して、回収した現金100を金利が1発生する預金に振り向けていたならば、預金金利分として+1の企業価値を増加させることができたはずです。
 ※この+1を得ることができたはずの利益(使用価値)と考えています。

 しかし、回収しないで売掛金として持っているならば、利益は発生しません。
 つまり、売掛金を持っていることを選択したことによって、回収を選択した場合と比較して+1の差額が発生します。これが機会損失金利です。
 
◆これだけ企業価値が流出している!

 では、以上を総括して具体的に金利として会社が失っている企業価値を見てみましょう。
 損益計算書を見てください。そこに支払利息と記載してある金額が借入金に対する金利として会社が失った企業価値です。また、株主資本変動計算書を見てください。そこに配当金として記載されている金額が資本に対する金利として会社が失った企業価値の一部です。
 また、貸借対照表を見てください。そこに売掛金、在庫として記載されている金額も使用価値を生みださない資産として、記載金額×金利率の金額が、機会損失金利として会社が失った企業価値です。
 ※ここでいう金利率とは使用価値の利率ですから、何で使用価値を得るか(例えば預金、有価証券、土地等)によって変化します。通常は、安定金利(短期なら預金金利、長期なら長期国債の金利等)で考えていればいいでしょう。

 さらに正確に言うと手許現金も金利がつかないので、機会損失金利が発生しています。さらに在庫については期間の経過とともに、品質劣化・時代遅れ品等で価値が下がることがありますので、保有しているだけで機会損失金利+品質劣化等の価値下落の合計分だけの企業価値を流出させている可能性があります。
 ※なお、在庫して不動産を保有(つまり販売用不動産)している場合は、逆に保有していても機会損失金利が発生しないこともあります。というのは、不動産は他の在庫資産と異なり、使用価値に着目した価値が自然に発生する場合があるからです。理由の説明は難しくなるので簡単にしか説明しませんが、不動産は多変性のある使用価値をもっているため、仮に在庫として計上してあっても、その使用価値のひとつに着目した実需が別のところで生じる可能性があるためです。
 例えば在庫としてイスと土地を持っていた場合を考えてみます。イスは”座る”という用途の価値しかもっていない(美術品的価値を持つイスは考えない)ので、仮に売却を考えた場合、誰に売っても同じ価値です。が、土地についてはビルを建てる、駐車場に利用する等の様々な用途で利用できるので、買主が使用目的を持っていれば価値が生じます。従って、売主が想定していない隠れ用途で使用価値が発生していて、より高い金額で売却できる可能性、つまり現状100の価値で計上されている土地が、場合によっては200の価値で売れるケースもあるのです。
 難しいですね。まあ、時と場合によっては、持っているだけでいきなり価値が上がることもあるからという理解でよいと思います。


 そしてここまで説明すると多分気づかれたと思いますが、

  プラスの使用価値を生み出さない=期間損失金利の発生

 ならば、固定資産に計上されていても遊休状態(つまり使用価値が発生していない状態)になっている土地や長期間塩漬けになっている有価証券も企業価値を流出させているのでは?と思ったかもしれません。その通り、企業価値を流出させてます。
 ※これらの遊休資産等の企業価値の流出を財務諸表に反映させてしまうのがいわゆる『減損会計』や『金融商品会計』です。いずれ解説予定。

 かなり長くなってしまったのですが、結局何が言いたかったのかというと、金利を念頭においてその対応策を考える会社、何も考えない会社とでは、金利対策以外は同じ事をしていても、上記分だけの企業価値の差が発生する可能性があるということです。
 金利の認識を持つことはとても重要なことだということですね。
 
 なお、話が長くなってしまったので、これらの企業価値の流出をではどうやって最小化するか?については次回にします。
 今回も買掛金の話から大幅に逸れてしまいましたね。スイマセン。

(次回に続く)
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2006年10月31日

資金管理をどうする?(7):続々お金を回す仕組みを考える(5)

では、買掛金が生み出すメリットを考えてみます。

◆買掛金で金利を付け替える

 まずは、よく考えてもらいたいことは、買掛金は借入金と同じ効果を生じさせることができるにもかかわらず、原則、無利息無担保だということです。
 ※もちろん、信用取引に際して仕入先から営業保証金の差入を要求される場合もありますので、無利息無担保ではない場合もあります。
 
これは、本来ならば当社が負担しなければならない金利相当額を、仕入先に転嫁しているということなのです。もっと簡単に言うと、仕入先が借入金の金利相当額を当社に代わって支払ってくれているということです。
 まずはこのことが大きなメリットです。
 で、逆に考えると売掛金のデメリットも分かると思います。得意先の借入金利相当額を当社が負担しているということなのですから。さらに、金利相当額だけでなく、管理コストや信用コストも負担していることを考えるとかなりのデメリットですよね。
 ※『売掛金管理をどうする?』参照

◆金利(利回り)と資金繰りについて考える

 またまた買掛金から話は逸れますが、重要なので、ちょっと金利(利回り)について考えてみましょう。
 そもそも、お金を回す仕組みとは、調達金利よりもどれだけ高い運用利回りで、制限された資金を運用できるかという論点を突き詰めていくものです。
 ここで、

 運用利回り−調達金利=ネット調達金利

 と考えた場合、もし仮にネット調達金利がマイナスでかつ、資金枠の制限が無ければ(信用リスクの負担を相手先が無制限に近く許容してくれるということ)、そもそもお金を回す仕組みを検討する必要は殆ど無いのです。ガンガンお金を調達して、バンバン投資すればするほど儲かるわけですから。
 
 ひょっとすると、ネット調達金利がプラスであっても資金枠の制限が無ければ、支払う金利分をまた調達すればよいのだから、お金を回す仕組みを検討する必要はないのでは?と疑問に思われるかもしれませんが、それは違います。
 というのは、そもそも企業は利益をあげる仕組みとして成立しているものですから、ネット調達金利がプラスのままではそもそも企業体として成立しません。これは商売すればするほど損をするということです。
 したがって、ネット調達金利がプラスの場合は、どうやってそれを0又はマイナスにするのかといった立場で、お金を回す仕組み(例えば、現金売りを利用する、買掛金を利用する等により金利負担を削減する)を考える必要はあります。

◆金利とキャッシュが重視される時代

 昔は、銀行が信用リスクをを担ってくれたため、お金を回す仕組み、すなわちキャッシュフローをあまり考慮しなくてもよかったこともありました。
 というのは、経済全体が右肩上がりであり、資産価値の向上(これが運用利回り)が調達資本のコストを超過していれば、ネットの調達金利は0、場合によってはマイナスになります。つまり、資産さえ保有していれば何にもしなくても利益が確保できるということです。そして、銀行は資産価値の向上を担保に、無制限に近い信用リスクを負ってくれたため、ネット金利が0(又はマイナス)の資金が無制限に調達できたのです。資金枠が無制限に調達できるならば資金繰りを考える必要はないですよね。
 
 ですが、資産価値の向上が調達資本のコストを下回る(つまりデフレ)と、状況は一変しました。銀行は資産価値の向上を担保に信用リスクの負担を行うことができなくなってしまうため、必然、融資枠に制限が生じてしまいます。そうすると、今まで無制限だった資金に縛りが生じてしまい、ではその限られた枠の資金をいかに効率よく使用するかという問題が出て来るわけです。
 なんか、経済学の話みたいですが、お金を回す仕組みを考えるとき、金利を意識することが必要なのはこのような理由からです。

 また、今は金融機関は企業融資に際する信用リスクの担保を保有資産の価値ではなく、それらも含めた総合的な企業価値、つまり、キャッシュフローを生む仕組みに求めています(というのが通説)。
 こういう意味でもお金を回す仕組みを考えることは、極めて重要な意味合いを持ってきていると言えますね。

(次回に続く)
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2006年10月29日

資金管理をどうする?(6):続々お金を回す仕組みを考える(4)

運転資本の最後の項目、前回もちょっと解説した買掛金について考えます。

◆買掛金はお金を本当に増やすのか?

 と、言われると?と思う人も多いと思いますが、確かに買掛金は一時的にしろ、会社のキャッシュフローを改善しますよね。
 どういうことかというと、例えば、手持ちの現金が100ある状態で100の仕入を現金で行った場合と買掛金で行った場合を比較します。

【現金で行った場合】

1.該当なし
2.100の仕入のために現金を100支払う。
3.該当なし

 よって、2.と3.の間で区切った場合の現金残高は0です。

【買掛金で行った場合】

1.100を買掛金として調達する
2.調達した買掛金100で仕入100を行う
 ※実際は1.と2.は同時に行われます。
3.3ヵ月後に買掛金100を現金100で返済する

 よって、2.と3.との間で会計期間を区切った場合の現金残高は100となります。

 つまり、キャッシュが100増加しているという意味は、現金預金の残高が100増えているということとは違います。現金残高を100増やしているのではなく、払うべき現金を先延ばしすることにより、擬似的に現金が100減っていない状態にしているということです。
 ※この差額である現金100を便宜上、擬似キャッシュと勝手に呼びます。

◆買掛金が実物キャッシュを生み出す

 上記のように、買掛金は支払うお金を先延ばしすることで、あたかもキャッシュが増加したような結果を導くことができます。
 ※例えば、上記の2.と3.の間で会計期間を区切って、キャッシュフロー計算書を作成すると、他の条件が同じならば、買掛金を利用した場合は、営業キャッシュフローが100増加した状態になります。

 しかし、いずれにせよ将来に支払う必要があるお金です。買掛金という面倒くさい処理にせず、さっさと現金でお金を支払った方が単純で分かりやすいですよね。何かメリットがあるのでしょうか?
 これを考えるために、買掛金による仕入と借入金による仕入を比較してみましょう。 例えば、支払サイト3ヶ月の買掛金が100あるとします。これは、仕入にかかった代金100を3ヵ月後に支払うというものですが、これを借入金で行った場合を考えてみます。

【借入金で行った場合】

1.100を借入金として調達する。
2.調達した借入金100で仕入100を行う
3.3ヵ月後に借入金100を返済する

 と考えると、買掛金で仕入を起こすことと、借入金で仕入を起こすことは本質的には同じ結果ですね。2.と3.の間で区切ってみると、確かにキャッシュは100増加していますし。
 ※キャッシュフロー計算書上は借入で起こしたキャッシュは『財務活動によるキャッシュフロー』区分に記載されてしまいますので、買掛金の場合とは区分キャッシュフローレベルでは違った結果となります。が、最終キャッシュフローは同じ。

 しかし、買掛金には借入金で仕入を起こすこと、さらには現金で仕入を起こすことと比較して実は大いにメリットがあります。それは、

1.原則、無利息無担保であること
2.支払サイトの延長・短縮を組み合わせることで+の実物キャッシュを生み出す余地があること

 という点です。
 ※但し、仕入取引にのみ利用可能といったデメリット?もあります。

 と、言われてもよく分からないと思いますので、もっと具体的に説明します。

(次回に続く)
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2006年10月27日

資金管理をどうする?(5):続々お金を回す仕組みを考える(3)

今回は前回の続きとして運転資本のうち、在庫を取り上げてみます。

◆在庫はありすぎてもなさすぎても困る。

 在庫管理は運転資本管理の中では最も扱いが難しいと個人的に思ってます。売掛金はサイトを限りなくゼロに近づければよく、買掛金はサイトを限りなく引き伸ばすのが一応の原則なのですが、在庫はこのように簡単にはいかないのです。

 というのは、在庫が少なすぎると、受注ロスによる損失が発生する可能性が高まりますし、一方、多すぎると在庫管理コストがかかりすぎるだけでなく、最悪、長期滞留や陳腐化といった事態が生じる可能性が高まるからです。つまり、理論上、在庫管理においては在庫切れによる受注ロスコスト(機会損失)と在庫管理コストとのバランスが最適となる解を考える必要があります。
 
 例えば、

 ・在庫1個当たりの受注ロスコスト金額:X
 ・在庫1個当たりの管理コスト金額:Y
 ・在庫数量:Z
 
 とすると、

 ・総受注ロスコスト=Z×(-X)
 ・総管理コスト=Z×Y

 したがって、最適解は上記の式の交点となります。

◆適正在庫水準は把握できるのか?

 では、実務上はその最適解はどうやって求めるのでしょうか?
 実はこれが非常に難しい。というのは、商製品の売れ行きは景気による影響を受けるのはもちろん、業種によっては季節的変動もかなりありますし、競合他社の戦略や流行等に左右されます。そして売れ行きの変動は即ち、受注量も大きく変動させるので最適解も動いてしまうからです。
 もっと分かり易く説明すると、前記の最適解は受注量を所与として在庫品切れによる受注ロスを計算していました。しかし、現実には受注量は大きく変動する要因であり、所与ではありません。したがって、条件がひとつ増え、
 
 ・在庫1個当たりの受注ロスコスト金額:X
 ・在庫1個当たりの管理コスト金額:Y
 ・在庫数量:Z
 ・受注量:T

 となり、

 ・総受注ロスコスト=(T-Z)×(-X) ※最大解は0
 ・総管理コスト=Z×Y

 となります。
 したがって、最適解は例えばTが増加すると、右にシフトしてしまいます。

 そして、実際上の問題はその受注量(T)を予想するのが極めて難しいことなのです。
 ※そもそも受注量が適格に予測できるならば、合理的な行動を取る限り受注量に見合った在庫しか保有しないはずなので、適正在庫水準うんぬんの話にならないですしね。

◆かんばん方式を考える

 では、受注量が適格に予測できないならば、変数(T)に依存しない在庫コストの管理方法を考えてみましょう。
 すると、変数(Y)か変数(Z)をコントロールするしかありません。
 つまりどういうことかと言うと、上記式から

  Z>=T
 
 となる限りにおいては、総受注ロスコストは0となります。
 ならば、常に受注量をカバーできる在庫があるが、その在庫管理コストを限りなく引き下げる方法があればいいことになりますね。
 ※もしくは常に在庫を保有しないで、受注ロスを回避する方法でも結果は同じことになります。まあ、それだと上記の算式がそもそも前提とならないのですが。
 
 では、そんな方法があるのか?ということなりますが、その方法として考えられたのがトヨタ式で有名な『かんばん方式』なのです。
 ものすごく簡単にこれを説明すると、かんばん方式とは自社では必要最小限の受注量を賄う在庫しか持たないで、残りは社外の下請け業者に持たせておきます。そして、手持ちの在庫がなくなると、また必要最小限の在庫を下請け業者に持ってくるように依頼する(このとき在庫の必要性を伝えるために用いるのが、いわゆる”かんばん”と呼ばれるものです。)といった方法です。
 こうしておけば、社内の在庫は常に必要最小限のため、管理コストも限りなく削減でき、さらにいつでも受注量をカバーする在庫を呼び出せる状態(頼めば飛んでやって来る下請け業者に持たせている状態)にしているため、発注ロスも回避することができるのです。
 ※結局、自社の在庫管理コストを下請け業者に押し付けているとも考えられるので、よく下請けいじめとも言われていますが…。

 このように在庫管理は突き詰めようとするとかなり難しい論点なのです。なので、実務上は多少のコスト発生があるとしても、受注ロスを発生させないように余裕を持って在庫を常備していた方がよいと思います。もちろん、運転資本の効率性を突き詰める観点からは問題が残るのですが。

(次回に続く)
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2006年10月13日

資金繰りをどうする?(4):続々お金を回す仕組み(2)

 十分な税引前利益が確保できたならば、次はその利益から如何に効率よくお金を生み出せるようにするかを考えます。ココで重要になるのが運転資本です。

◆運転資本とは?

 信用商売を行っていると、売上は直ぐにお金にならず、いったん売掛金という債権のかたちで企業に留保されます。一方、仕入も、直ぐにお金を払わず、いったん買掛金という債務のかたちで企業に留保されます。さらに、商売のためには商品等の在庫を抱えておく必要があります。
 そして運転資本とは簡単に言ってしまうと"売掛金と在庫の合計から、買掛金を差し引いた差額"のことです。が、理解の上では、売掛金や在庫、買掛金などをまとめたものを運転資本と考えた方が理解しやすいでしょう。

◆売掛金は限りなくゼロに。

 今回はこの運転資本のうち、売掛金について考えてみます。第1回目に説明したとおり、お金を増やすためには売掛金(売上)を回収しなければなりません。そして売掛金(売上)を回収する時間を早めれば早めるほどお金はどんどん増えていきます。

 ※正確に説明すると、売掛金という債権がお金に早く変化するということ、つまり売掛金を減ってお金が増えるということです。

 そして、売上の回収にかかる時間を限りなくゼロに近づけていくと、利益はキャッシュフローに限りなく近づいていくことになります。このことは"現金商売は利益がキャッシュフローに直結する"ことを考えてもらえば分かりやすいです。

 ※もちろん、現金主義で会計を行っていない以上、現金商売でも減価償却費、経過勘定項目、引当金等が存在するので、両者は完全に合致はしません。

 このように売掛金を限りなくゼロに近づけることで、より効率的にお金の回る仕組みが構築できることは分かったと思いますが、そのために必要なことはなんでしょうか?
 そうです、売掛金のサイト(支払条件)が極めて重要ですね。サイトが短い得意先の売上が増えて行けば、自然、売上はいち早くお金に変化していきます。

 そう考えると、サイトを決定する時点で”お金を回る仕組みを作るんだ”という意気込みでできる限り短いサイトを交渉するべきです。なお、サイトは一旦決定されてしまうと、通常そのサイトを所与として販売管理のシステムを稼動させてしまう以上、後で変更することは難しいです。一番最初が肝心なのです。

 ただ注意したいのは、サイトを短期化する交渉は売上割戻し等の行為を伴うこともあります。なので、闇雲に短期化の交渉をするのではなく、割戻しによるマイナスキャッシュフローとサイト短期化によるプラスのキャッシュフローを比較してよく考えて選択する必要があります。
 ※この点に関しては『売掛金管理をどうする?(1)』を参照してください。

◆サイトは実現化しなくては意味が無い。

 サイトは短くしただけではOKではないです。短いサイトで回収する努力も必要です。サイトとはあくまでも支払条件であり、その通り支払ってもらえるかどうかの保証はありません(サイトどおり支払われないと考えた方がよい)。得意先の支払い忘れ等は良いほうで、資金繰りの悪化、倒産等が不可避的に発生します。なので、そうなったとしても最悪の事態(1円も回収できないとか)を避けるために、普段から与信管理、サイト通りに支払ってもらうための催促はしておきましょうということです。

 またこれと関連して以前、『売掛金管理をどうする?(1)』で、売掛金を持つことはコストを持つということで解説しましたね。従って、売掛金を減らしてキャッシュフローを増やすということは、単にお金を回す仕組みを構築するだけでなく、副次的効果として隠れ金利を削減するという二重の意味もあります。そして、隠れ金利が削減される結果として、税引前利益が↑するので、最終的なキャッシュフローも底上げされるということですね。

 ※さらに、利益をキャッシュフローに近づけることの副次的効果として、損益管理と資金管理を一体に近い状態で行うことができるというメリットもあります。

◆圧倒的に有利な現金売り

 ただ、与信管理や債権回収等の管理コストは、売掛金残高よりもむしろ、掛売り金額規模との関連性が強いと思うので、掛売りの金額自体を減少させない限り、如何にサイトを短期化しても大幅な削減は見込めないかもしれません。
 とすると、管理コストを大幅に削減できる現金売商売はコストメリット的に非常に有利なことが分かりますね。

 以上を踏まえると結論としては、お金の回る仕組みを構築(+税引前利益も底上げ)する観点からは、

  1.売掛金は限りなくゼロに。そのためにはサイトの短期化交渉を。

  2.掛売り自体も限りなくゼロに。究極的には現金売りにすべき。

ということになります(理想論)。
 まあ、実際上、現金売りは個人顧客相手でもない限り難しいのですが、考え方のスタンスとしてはということです。

(次回に続く)
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2006年10月09日

資金繰りをどうする?(3):続々お金を回す仕組みを考える

 まず、前回のまとめとして3区分の+と△が示している状況を簡単に説明します。
 
 ・営業活動によるキャッシュフローが+
 →あるべき姿。営業活動から資金を稼げている。 
 ・営業活動によるキャッシュフローが△
 →営業自体が不振(利益が出てない)、もしくは利益をお金にする仕組みが十分でない。
 
 ・投資活動によるキャッシュフローが+
 →設備投資を抑制しているor財融資の投資結果がでている等の状況が考えられる。
 ・投資活動によるキャッシュフローが△
 →積極的な投資活動を行っているor投資効率が悪い等の状況が考えられる。
 
 ※投資活動によるキャッシュフローはそれ単独だけで判断するのではなく、営業活動によるキャッシュフローの結果を受けてどうなのか?といった観点から考えることが重要です。
 例えば、営業キャッシュフローが+の場合は、本業によって稼いだキャッシュをどれだけ投資活動(設備、人材、運用等)に振り向けているかを見るべきですし、営業キャッシュフローが△の場合は、本業によって生じた資金不足を、資産売却や融資の引き上げ等によってどのように埋め合わせをしているのかを見るべきです。


 ・財務活動によるキャッシュフローが+
 →資金の調達>資金の返済。調達方法を把握し、調達目的を推測してみると良いです。
 ・財務活動によるキャッシュフローが△
 →資金の調達<資金の返済。返済方法を把握し、返済源資と返済目的を推測してみると良いです。
 
 ※財務活動によるキャッシュフローも、営業活動・投資活動によるキャッシュフローの結果を受けてどうなのか?といった観点から考えることが重要です。
 例えば、営業活動によるキャッシュフローの+を投資活動によるキャッシュフローに振り向けてもなお+の場合は、残りのキャッシュをどのように留保と資金返済(借入返済・社債償還等)に振り向けているかを見るべきですし、営業キャッシュフローの△が投資活動によるキャッシュフローでも埋めきれていない場合は残りの資金手当てを財務活動によってどのように行っているのかを見るべきです。また、調達・返済目的を推測することで会社財務の今後の方向性が見えてくることもあります。


◆営業キャッシュフローが優先第一

 上記のまとめからも分かるように、最も重要なのは営業キャッシュフローの改善に尽きます。そして投資活動・財務活動によるキャッシュフローの分析は、営業活動によるキャッシュフロー分析を踏まえてこそ意味があります。
 まあ、もともと本業でお金が稼げなければ、投資活動も財務活動もできませんしね。

 では、営業キャッシュフローはどうやって改善するのか?ですが、ポイントは3つです。

 1.税引前利益の増加
 2.運転資本の圧縮
 3.支払税額の減少

 つまり、営業キャッシュフローの構成項目の中で、会社がコントロールできる項目が上記の3つなのです。この中で1.利益を稼ぐ仕組みに関連する部分であり、2.3.は主にお金を回す仕組みに関連する部分ですね。
 ※減価償却費、引当金、営業外損益・特別損益項目をコントロールした場合も、キャッシュフローの計算過程で加減算されますが、もともと税引前利益に反映されている項目なので最終的なキャッシュフローに影響は無いので(一部例外もあり)基本的に考慮しません。

 具体的に考えます(簡単にするため減価償却費、引当金等は無いものとします)。
 
 【税引前利益150、運転資本+50、支払税額100のケース】
 
 この場合、営業キャッシュフローはゼロです(150−50-100=0)。税引前利益が150あるにもかかわらず、会社のお金は1円も増えていないのです。そこで、営業キャッシュフロー改善化が必要になるのですが、アプローチとしては上記の1〜3の順に考えます。
 
◆そもそも利益水準は妥当なの?

 まずは1.の税引前利益の増加ができるかが第一のポイントです。一応の利益は出ているのですが、その利益水準が売上水準から考えて妥当なものなのかを考えてみます。もしここで売上金額から考えて、あまりにも利益金額が小さいということになれば、お金を回すことよりも、利益を増加させることを考えなければなりません。
 ※つまり、優先度としては利益を出す→お金を回すということです。

 利益を増加させる方法としては売上の↑か原価の↓しかないので、会社の現況を考えて最適な手段をとる必要があります。単純には、

  売上=(販売単価×販売数量)−値引き等

  原価=(仕入単価×仕入数量)−値引き等+販管費

 なので、コントロールできる変数は絞り込めると思います。
 なお、一般的に、販売仕入の単価・数量に関しては取引先との折衝が絡むことからコントロールの敷居は高いです。まずは、販管費の削減から手をつけるのがよいと思います。そこで、抜本的に改善が図れないならば、販売仕入に着手するといった感じでしょうか。
 ※例えば、独占的に仕入を行っている等、立場関係によっては販売仕入のほうが手をつけやすい場合ももちろんあります。

 また、仕入数量に関しては運転資本(在庫)とも密接に絡むところなので、お金の回し方のときにも再度検討を要します。
 
 結果として利益水準はまあ十分でしょうとなったら、次にお金を効率的に回す仕組み構築します。利益率が悪いうちは、まずは利益の改善に注力するのが無難ですね。もちろん継続的な販価交渉・コストダウンで利益を改善しながら、お金を回す仕組みを構築していけるのならベストなのですが。
(次回に続く)
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2006年10月05日

資金繰りをどうする?(2):続お金を回す仕組みを考える

 前回、会社としてお金を稼ぐためには、売上利益を増加させ続けるだけでなく、同時にお金が回る仕組みを構築していかなければならないと言いましたが、では具体的にどうやるの?について考えてみます。
 
◆まずは月次でキャッシュフロー計算書を作ってみる

 お金を回す仕組みを考える前に、まずは現状のお金の回り具合を確認してみましょう。それに最も手っ取り早い方法は、とりあえず月次でキャッシュフロー計算書を作ってみることです。
 年間一本だけでもいいのですが、月次で作成して時系列的に比較する方が、季節的な資金繰りの変動が把握できていいです。

※キャッシュフロー計算書の作成自体の敷居も高いことは確かなのですが、非常に便利なツールなので頑張って勉強する価値はあります。本屋さんに行くと『キャッシュフロー計算書入門〜』のような本がたくさんありますので。一度理屈を覚えてしまえば、資金繰り分析に使用するレベルのものならば結構簡単に作れますよ。

◆キャッシュフロー計算書とは?

出典−フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 キャッシュ・フロー計算書とは、一会計期間における資金(現金および現金同等物)の増減、つまり収入と支出を、営業活動、投資活動、財務活動等に区分して表示する財務諸表である。資金計算書ともいう。
 企業会計において、損益(損益計算書で示される)は必ずしも現金等の収支と一致しない。たとえば、銀行からの借り入れは現金の収入(増加)となるが、損益計算における収益ではない。また、減価償却費は損益計算上は費用となるが、同一会計期間における現金支出とは必ずしも一致しない。
 キャッシュ・フロー計算書の作成目的は、損益計算書とは別の観点から、企業の資金状況を開示, 即ち企業の現金創出能力と支払い能力を査定するのに役立つ情報を提供すること及び利益の質を評価するのに役立つ情報を提供することにあるとされる。

◆会社のお金は何から得ている?

 キャッシュフロー計算書が作成できたら、次はどうやってそれを利用してお金の回り具合を確認するかですね。
 そのためにはまずはキャッシュフロー計算書の区分(3区分)の理解が必要になります。それぞれの簡単な意味としては下のようになります。
 
 「営業活動によるキャッシュフロー」:本業の営業活動の結果として稼いだ(費やした)キャッシュ金額。
 
 「投資活動によるキャッシュフロー」:有価証券売買、固定資産の取得・売却、貸付等の投資活動の結果として稼いだ(費やした)キャッシュ金額。
 
 「財務活動によるキャッシュフロー」:借入・返済、社債・新株発行等の資金調達活動の結果として稼いだ(費やした)キャッシュ金額。

 ※この辺については、入門書を一冊読んでもらえるとありがたいです。

 次に上記の区分に従い、キャッシュの源泉を確認します。具体的に説明すると、ある会社で前期末から比べて当期末のキャッシュ残高が1,000円増加していたとします。その1,000円がどんな原因で増加したのかを明らかにすることが最初のアプローチになります。

※もちろん原因、つまりお金の増減の源泉は複数から構成されている場合が殆どですが、細かいことは気にせずに、まずは3区分のどこの比重が大きいのかを把握するレベルで十分です。

 お金の増加している場合、まずは、その原因を以下の2ついずれかに区分します。
 
 1.営業キャッシュフローが+の場合

 あるべきお金の回り方です。つまり、会社の本業でお金がきちんと稼げていることになります。そうすると次のアプローチとして@稼いだ営業キャッシュフローをどのように利用しているか(利用するか)?とAさらに多くの営業キャッシュフローを稼ぐにはどうすればよいか(より効果的なお金の回る仕組みの構築ですね)に進みます。
 もちろん、営業キャッシュフローが+で、それ以上に投資キャッシュフローや財務キャッシュフローがプラスの場合もありますが、その場合もとりあえずこちらの区分で考えます。
 
 2.営業キャッシュフローが△の場合

 そもそもお金が回っていません。そこでまずは、@そもそも本業の業績(利益)が芳しくないのか、A本業の業績は上がっているがそれがお金に結びついていないのか、のどちらであるかを明らかにします。@でしたら、まずは売上利益を計上することが最優先事項ですし、Aでしたらお金の回る仕組みを構築することでかなりの改善が見込まれるかもしれません。
 また、2.において最終的なお金が増加しているならば、資産売却や借入・増資等でお金を調達しているはずなので、それを投資活動によるキャッシュフローと財務活動によるキャッシュフローから確認します。
 
 と、簡単な説明ですが、とりあえずマクロ的にはこれで十分だと思います。お金の増加の出所(特にそれが営業キャッシュフローにどれだけ依存しているかが重要)を掴めればオーケーでしょう。
 それでもって、出所が分かれば、

 ・その出所が示しているお金の回り方の状況

 を理解して

 ・あるべきお金の回り方に近づける(より改善する)方法

 を検討するステップになります。
 (次回に続く)
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2006年10月03日

資金管理をどうする(1):お金を回す仕組みを考える

 よく質問されることでもあるのですが、売上が増加していて利益も上がっているのに、資金繰りにいつも悩んでいる…といったようなことはありませんか?
 
 ◆例えば…(実例)

 社長がバリバリの営業マンのような営業主体の会社は、イケイケドンドンで売上を向上させることは得意ですが、その売上から最有効に適正化されたキャッシュフローを稼ぎ出すためのプロセス構築、つまり、売上水準に適正に対応したキャッシュフロー水準を確保することが苦手な場合が多いと思います。
 例えば、売りっ放しで債権管理ができていない、在庫管理ができておらず売れない在庫が山積みされている、売上効果の乏しい多額の経費の支出等…。
 
 ◆利益管理とキャッシュフロー管理は全く別
 
 なんで、利益が上がっているのにお金が足りないのか?
 これは、利益計上のプロセスとキャッシュフローのプロセスの違いを考えると分かりやすいと思います。
 例えば、
 
 100の原価の商品を仕入(現金)れて、200(掛)で売ったとします。すると仕訳は、
 
 (借)商品  100/(貸)現金  100
 
 (借)売掛金 200/(貸)売上  200
 (借)原価  100/(貸)商品  100
 
 で100の利益が計上されます。
 ここでは、利益は100計上されていますが、お金は増えていません。むしろ△100となっています。お金が増えるのは、売掛金200を回収したとき、仕訳的には
 
 (借)現金  200/(貸)売掛金 200
 
 となったときです。
 つまり、当たり前ですが、利益を計上しても債権を回収しない限りお金は増えないのです。
 ※これも当たり前ですが、お金が増えない→会社が存続しないということです。この点を失念している方も多い。

 ということは、債権回収をきちんとしないでドカドカ売上を積み上げていくとどうなるでしょう?
 利益は↑続けますが、キャッシュフローは↓続けますよね。
 ※上記の3番目の仕訳までが繰り返されるのですから、売掛金と商品は積みあがっていますが、現金が流出し続けていくことが理解できると思います。
 
 ◆お金は回る仕組みがないと回らない
 
 上記のようなプロセスが繰り返され続けると、売上も上がっている、利益も増えているのにお金が増えない状態から、仕入をおこすためにお金を借りなければならない状態になります。そして、借り入れたお金はいずれ返済しなければならないので、その返済のためにまたお金を借りる…。
 こうなってしまうと、もう売上をあげることよりも、会社を潰さないための資金繰りに注力する羽目になり本末転倒ですね。
 
 もっとも緊急でやらなければならないことは売った商品の代金を回収することなのです。営業の仕事は代金回収しないと完結しないはずなのですが、この最後の締めをあまり重要と考えていない経営者の方も多いような気がします。
 
 そこで、そのようなことを考えなくともお金の回る仕組みを構築することを考えてみてはどうでしょうか。もちろん、そのためにサイトの改善、ファクタリング等の利用、最適債権水準・在庫水準の管理等がしっかりできている必要があります。このような仕組みは構築するまでは大変ですが、一度構築して強制的にルール化してしまえば、結構すんなり回りだすものだったりするんですよね。
 方法としては、経営管理に専門性をもった人材を設置することが簡単で効果的だと思います。さらに社外役員だったりすると、社長の耳の痛い意見もバシバシ言える(はず)なので、より効果はあると思います。
 会社をきちんとコントロールしてくれている管理担当役員がいることで、社長も心置きなく営業に注力できるでしょう。一考するメリットはあると思いますよ。
posted by PDs at 21:24| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 経営管理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月26日

ストックオプションをどうする?(3):続々ストックオプション会計基準

 まずは前回の「自己株式購入→現物株式を従業員に報酬として支給の方が、費用計上しない分お得なような…。」ですが、平成18年度監査小六法の自己株式に関する会計基準を読んでみたところ、やはり、自己株式を譲渡した場合は

  自己株式の譲渡価格−自己株式の帳簿価額
  =自己株式処分損益


となりました。
 さらに、この自己株式処分損益は資本取引として、その他資本剰余金に計上されるため、会計処理方法は@資本剰余金から控除orA利益剰余金から控除のいずれかとなり、PLは経由しないことになります。

◆まとめると…

 ここで一旦まとめます。従業員に100の価値の報酬を支給するとしましょう。この場合の支払方法としては下記の3つの選択肢があるのですが、

1.現金100を支給
  =費用計上

2.100の価値あるストックオプションを支給
  =(原則)費用計上

3.100の価値ある現物株式(自己株式)を支給
  =資本項目から控除

 いずれも同じ事実行為(従業員に対して100の価値ある報酬を支払う)であるにもかかわらず、その支払方法の違いで異なる会計処理が行われてしまうことになります。
 
 ここでよく考えてみたいのが3.の処理です。特にこの場合は、支給前から自己株式については資本の控除科目として処理されているのですから、いくらで譲渡したとしてもBSにマイナスに作用することはありません。譲渡価格が1円以上であれば、報酬として支給したことにより、逆にBSにプラスに作用することにもなってしまいます。
 
 ※この理由を簡単に説明すると、企業会計上、自己株式はその取得価額全額が資本の控除科目とされているからです。例えば、100円の自己株式を1円で譲渡すれば、

  (譲渡前)資本項目からの控除金額:自己株式100円
  (譲渡後)資本項目からの控除金額:自己株式処分損99円

となります。もともと全額がマイナス処理されている以上、いくらの価格で譲渡しようともBSにプラスに作用することはあれ、マイナスに作用することはありません。


 ◆自己株式は資産価値が否定される

 ではなぜこのような違いが生じてしまうのでしょうか?
 既に理解されていると思いますが、その理由は現行の会計基準が自己株式を資本の払い戻しとして理論構成している点にあります。
 例えば、これを従業員への報酬支払の観点から説明すると、自己株式は従業員に報酬として支給できるだけの価値(労働の対価としての価値)が存在しているにもかかわらず、企業会計は自己株式を取得した時点でその全額に相当する企業価値の減少があると(少なくとも会計処理上は)理論付けているということです。
 
 分かりやすく説明します。自己株式を資本の控除科目ではなく、資産項目と考えてみましょう。そうすれば、自己株式を従業員に報酬として支払った場合でも、現金報酬を支払った場合と同じように、

  (借方)費用 ×× / (貸方)自己株式 ××
  (借方)剰余金 ×× / (貸方)費用 ××

 とPLを経由する処理がされます。
 ※事実、昔は自己株式の本質を資産項目とする説もありました。
 
 しかし、資本の控除科目と位置づけてしまったことで、

  (借方)費用 ×× / (貸方)自己株式 ××
  (借方)剰余金 ×× / (貸方)費用 ××

 と処理されるところを、その取得時に一挙に

  (借方)剰余金 ×× / (貸方)自己株式 ××

 とPLを経由せずに処理してしまっているのです。
 
 ※しかも、会社が自己株式を保有していても、既に外部譲渡済みの場合と同じ結果となるように処理(一挙に剰余金にヒットさせる処理)を行っているため、実際に外部譲渡した時点でも、その事実が会計上反映されません。

 以上から、語弊があるかもしれませんが、自己株式の取得は企業価値の支払をPLを通さずに行うことができる方法であると言えるかもしれません。
 自己株式を人件費以外の報酬の支払手段として利用することで、キャッシュの流出はありますが、PLにヒットしない経費を計上することもできますしね。
 ※もちろん会計処理としては正しい方法なのです。が、理屈的にはどうなのかなと思いますが…。
posted by PDs at 21:19| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 資本政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月23日

ストックオプションをどうする?(2):続ストックオプション会計基準

 前回の「同じ企業価値であるにもかかわらず、ストックオプションを付与した時点の違いで、最終的な費用計上額に差が生じるのは、ちょっとおかしいような…。」という記載ですが、その後いろいろな人の意見を聞いたり、ちょっと考えてみたりした結果、見直し規定が無くてもいいのではと考え直してます。
 
 なんでそうなったかという具体的な理由はこうです。
 そもそもストックオプション会計基準の趣旨は”報酬に相当する価値を費用計上すること”、つまり、人件費を現金で支払った場合とストックオプションで支払った場合とを比較して企業財務上、異なる影響が出るべきではないという点にあります。

◆現金支給とオプション支給との比較
 
 例えば、1株当たりの評価額が10万円の会社を考えてみます。この会社において9万円に相当する報酬を従業員に支払う方法として以下の2パターンを考えてみます。

1.9万円分のストックオプションを発行する場合

 この場合は、行使価格1万円のストックオプションを従業員に対して発行することになります。ストックオプション会計基準に準拠して費用計上額を試算(条件の簡略化のため付与日=権利行使可能日とします)すると、

   自社の株式の評価額−権利行使価額=本源的価値

ですから、

   10万円−1万円=9万円

となり、9万円が報酬として計上されることになります。そしてこれは、従業員への支払報酬として企業価値が9万円分消費された結果とも言えます。
 ※10万円の価値がある(はずの)株式を1万円で購入できる権利を報酬として貰ったと考えると分かりやすいです。

2.9万円分の現金を支払う場合

 では、9万円を現金で従業員に支払った場合はどうでしょうか?考えるまでも無く、企業価値の消費は9万円です。
 
 上記の結果から、企業評価が適正に実行される限りにおいては、ストックオプション会計基準を適用した結果と、報酬を現金で支払った結果において、財務上差異が生じることは無いはずだとの結論が出てきます。
 ※同じ結果となるような処理を求めるのがストックオプション会計基準の趣旨なので当然。

 であるならば、報酬を支払った時点以降においても財務上の差異が出てくるべきではないはずです。と、もっと分かりやすく説明すると、

 現金で支払った場合は支払時点で対価金額は実際支払額として確定
         ↓
 支払った企業価値の消費は支払時点でFIX
         ↓
 後で追加の費用計上をする必要はない

 よって同じように、

 ストックオプションで支払った場合も支払時点で対価の相当性(企業価値の消費)は確定させるべき
         ↓
 将来に株式評価額が上昇したとしても、ストックオプション価値を見直して追加費用を計上する必要はない

 ということです。

 つまり、付与した企業側から見ると、ストックオプションを付与した時点で、企業は当該オプションに係る企業価値の増減とは分離されてしまうということですね。
 このように考えると”見直し規定”がないのは正しいのではと考え直したわけです(後で基準をきちんと読み込んでみたら『見直さない』との記述がありました)。
 ※「同じ企業価値である〜中略〜最終的な費用計上額に差が生じるのは、ちょっとおかしいような…。」と書いていましたが、そもそも同じ企業価値なら、1株当たりの評価額は同じはずなので、最終的な費用計上額に差は生じないですね。スイマセン。

◆株式を現物支給した場合は?

 で、ここまできて気づいたのですが、ストックオプションの代わりに現物株式(自己株式)を支給した場合はどうなのかと考えてみると、自己株式の取引は資本取引のため、従業員に支給してもPLに影響がないですね。
 ※資本取引として『自己株式処分損』がその他の資本剰余金に計上されるので、BS処理だけで完結してしまいます。
 
 ならば、ストックオプションを付与するよりも、

 自己株式購入→現物株式を従業員に報酬として支給

 の方が、費用計上しない分お得なような…。

と、思ったですが、ちゃんと会計基準を読み込んでみる必要がありそうです。次回に再検討してみたいと思います。
posted by PDs at 00:21| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 資本政策 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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